シミュレーションゴルフの今

2015.06.18

オンラインで人気沸騰のシミュレーションゴルフ 歴史をたどる

韓国では、ゴルフの楽しみ方のひとつとしてシミュレーションゴルフが定着しています。ゴルフバンという施設が流行し、テレビ中継されるシミュレーションゴルフのプロツアーもあります。それではなぜそんなに人気があるのか? 韓国と日本の違いにも触れながら、今回から数回にわたって韓国のシミュレーションゴルフ事情を見ていきましょう。

まず今回は、韓国においてシミュレーションゴルフの文化がどのようにして生まれ、広がっていったのか、その歴史を追っていきます。

シミュレーションゴルフ歴史をたどる(ゴルフバン)

2000年前後の韓国のゴルフ事情は……?

1990年代、韓国ではゴルフは一部の人たちが楽しむスポーツでした。ゴルフはお金持ちが接待などで行うスポーツで、普通のサラリーマンには縁遠いものだったのです。1997年にアジア通貨危機が起こり、韓国に大きな経済的打撃が押し寄せます。20歳のパク・セリ選手がプロ入りすると同時に、全米女子オープンで史上最年少優勝を果たしたのは、その翌年1998年のことでした。パク・セリ選手の活躍は韓国人に高揚と新たな希望をもたらし、多くの少年少女がパク・セリに憧れてゴルフを始めるようになります。

シミュレーションゴルフの登場で「ゴルフバン」が自然発生

元サムスン電子の技術者という経歴を持つキム・ヨンチャン(現・会長)が株式会社GOLFZONを設立したのはその数年後でした。事業は2000年5月に社員5名でスタートし、2年の開発期間を経て2002年に最初のシミュレーションゴルフのマシンが完成します。マシンは当初、屋外ゴルフ練習場を中心に導入されます。しかしすぐに普及したわけではありませんでした。ブレイクの始まりは2003年、インドアゴルフ練習場にマシンが導入されてからのことです。実は韓国では屋内ゴルフ練習場のほうが屋外ゴルフ練習場より数が多いのです。規模は屋外より小さく打席数は5~9、平日の昼間に多く利用するのは、周辺に住む、互いに顔見知りの50代、60代の自営業者や主婦でした。そんな人たちが以前は1時間ほど練習をして帰っていたのですが、シミュレーションゴルフを見つけると試しにプレーし、やがて仲間と一緒にラウンドし始め、夢中になっていきました。練習場によってはマシンの前に順番待ちの列もできるようになりました。そして2006年、ソウル周辺の工業団地地域でシミュレーションマシンだけをそろえた専門店舗が現れ始めます。これらの店は「ゴルフバン」と呼ばれるようになります。アジア通貨危機の影響もあって企業を早期退職した人たちが、新しいビジネスとしてゴルフバンを始めるケースも出てきました。

シミュレーションゴルフ歴史をたどる(ラウンド文化)

オンライン化が進んで大会がスタート

2006年下半期にはマシンにモーションリプレイ機能が備えられました。自分のスイングを動画として再生して見られるようになったのです。また、GOLFZONのマシンは当初から、打席に傾斜をつけられるシステムが備えられていました。斜面からのショットを再現したいというキム氏のこだわりから生まれたものです。これらのギミックはプレイヤーに非常に好意的に受け入れられていました。ゴルフバンが一気に増えると競合他社も現れましたが、マシン機能の優位性によってGOLFZONは業界リーダーとしての立場を確立していきます。2007年にはオンライン化がスタートします。ゴルフバンのマシンがつながることによって各店舗のプレイヤー同士でスコアやランキング競争が行えるようになりました。まもなくオンラインを利用したゴルフコンペを模した大会も始まります。最初は店舗や地域ベースで行われる大会「GLF (GOLFZON Live Festival)」が、やがて全店舗を対象とした全国大会「GLT (GOLFZON Live Tournament)」が開催されました。同じ2007年のことです。

シミュレーションゴルフ歴史をたどる(GTour)

シミュレーションゴルフが新しい“文化”として定着

シミュレーションゴルフはこうして韓国内に新しい市場を作り出したのです。GOLFZONの販売業績は2002年には10億ウォン(約1億円)だったのが、2008年には1000億ウォンを超えるまでに飛躍を遂げます。オンライン会員数は100万人を突破し、今ではシミュレーションゴルフ産業全体の市場規模は2兆ウォンに達するとも言われています。プロゴルファーが参加する「GTOUR(ジーツアー)」が始まったのは2012年のことです。プロがマシンを使ったツアーでしのぎを削ることで、シミュレーションゴルフはスポーツとしても認識されるようになりました。
ゴルフバンという業態を自然発生させ、プロも参加する「GTOUR」がメディアに取り上げられるようになって、シミュレーションゴルフは文化として定着していきました。韓国ではシミュレーションゴルフは単なる“ゴルフの真似事”ではない、“新しいゴルフ”として楽しまれています。今では多くのサラリーマンやOLが、ゴルフバンで気軽にゴルフに親しんでいるのです。