シミュレーションゴルフの今

2016.11.08

シミュレーションゴルフが持つ大きな可能性、ゴルフ人口減少を食い止める方法とは

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ゴルフ市場の縮小とゴルフ人口の減少……その流れを堰き止めることはできないのか? 既存の価値観からすれば少し意外かもしれませんが、その答えとなる動きは、アウトドアではなくインドア、フィールドではなくシミュレーションゴルフという分野から始まっています。
日本のゴルフをめぐる現状とシミュレーションゴルフが持つポテンシャル、そして新しいターゲットを取り込んで成長している新しいゴルフについてご紹介しましょう。

日本のゴルフ場、ゴルフ練習場の数は減少が続くが……

ゴルフ市場は、ゴルフブームが衰退していったバブル崩壊後から20年で半分以下に縮小したといわれます。ゴルフ場の数は2000年を過ぎる頃までは増えていたのですが、その後減少に転じ、ここ数年はその勢いが止まらないという状況です。

日本ゴルフ場事業協会「ゴルフ場利用税の課税状況からみたゴルフ場数・利用者数等」によれば、2014年のゴルフ場数は前年より50減って2336コース。過去最高数だった2002年の2460コースと比べると124コースの減少となっています。同調査によればゴルフ場利用者の数は1990年がピークで、延べ利用者数は1億232万5000人、1ゴルフ場あたり利用者数は5万2243人でした。2014年にはそれぞれ8650万5000人、3万7031人にまで減っています。

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屋外の打ちっぱなしゴルフ練習場も同様です。全国に3000程度あるといわれるゴルフ練習場は、この20年以上減り続け、1992年頃のピーク時に比べると、現在は40%近く数が減っているといいます。
このようにゴルフ市場は衰退の一途をたどっているようにも思えますが、しかし一方で密かに活気を呈しつつあるゴルフ関連施設もあります。それがインドアゴルフ施設です。

インドアゴルフ施設は、日本では主婦や女性層をターゲットにしたゴルフスクールとして発展してきました。しかし、最近は以前より手軽で誰でも行きやすい店舗が目立つようになっています。都内などでは、駅近くにあるビルのワンフロアに新しいインドア練習場がオープンしているのをよく見かけます。全国のインドアゴルフ施設数を把握しているしっかりとした調査がまだないのは残念ですが、その数は確実に増えているはずです。

世界のゴルフ事情から学べること

ここで少し目を転じて、世界のゴルフ事情を見てみます。

まず、韓国では、もともとゴルフは富裕層が楽しむものという時代が長く続いていました。1990年代に入っても日本ほどゴルフは一般に普及せず、ゴルフ場もゴルフ練習場も身近なものではありませんでした。
状況が変わったのは1998年、当時20歳のパク・セリ選手がプロ入りすると同時に、全米女子オープンで史上最年少優勝を果たしてからです。韓国人のゴルフへの関心が急激に高まり、とくに少年少女がパク・セリ選手に憧れてゴルフを始めるようになります。

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スポーツというよりレジャーとしてゴルフを楽しむ人が増えたのは、さらにその後のことです。2003年から2006年にかけて、韓国ではシミュレーションゴルフが一大ブームを引き起こしました。インドアでスクリーンを前にしてプレーするゴルフです。このシミュレーションゴルフマシンは、最初はインドア練習場に置かれていたのですが、やがてすぐにシミュレーションゴルフ専門店が作られていきます。
「ゴルフバン」と呼ばれる専門店には、シミュレーションゴルフのマシンが5~7台も設置され、会社帰りのサラリーマンが数人で連れ立って、毎日のように通う光景があちこちで見られるようになりました。そしてブームは定着し、シミュレーションゴルフからゴルフを始めて、やがて通常のゴルフ場でデビューするという人も多く現れるようになります。

韓国でのゴルフブームの盛り上がり方が、日本のそれとはまったく違っていたことがおわかりいただけたかと思います。しかし日本の現在の状況と、韓国のかつてシミュレーションゴルフが流行り始めた頃の動きとは、どこか通じるものがあるようにも感じられます。当時の韓国でもインドアで楽しむゴルフが注目され始め、既存のゴルファーとは違う新しい層を巻き込んだ新しいゴルフの胎動が聞こえていました。

一方、欧米では、インドアゴルフはあまりポピュラーではありませんが、逆にアウトドアの打ちっぱなし練習場に変革が起きています。イギリスで生まれ、アメリカでも大流行中の「TOP GOLF」をご存知でしょうか。TOP GOLFとは、ゴルフボールの中にコンピュータチップが仕込まれていて、球を打った先にはいくつもの派手なターゲットが設置されているというドライビングレンジ施設です。
プレーヤーの6割はゴルフ未経験者で、ビールや各種カクテルを飲み、フードを食べながら、自己流でも何でもクラブを振ってこのゲームを楽しんでいます。ここでもまた、既存のゴルファーとは異なるライトゴルファーたちが、新感覚のゴルフを発見して楽しんでいるのです。

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ライトゴルファーをターゲットとする

日本で最近よく見かけるようになったインドアゴルフ練習場を利用しているのは、かつてのゴルファーとは違う層です。新オープンのインドアゴルフ練習場はどこも新しいターゲットを意識していて、これまでゴルフ経験がなかった人でも気軽にゴルフが楽しめることをセールスポイントにしています。レッスンも、ゴルフの技術をひたすら向上させるというものではなく、ひとまず打てるようになることや、ゴルフの楽しみを伝えるようなスタイルのものが多くなっています。最近のインドアゴルフ練習場は、OLや女子大生の姿が増え、男性の利用者も多くなっています。

そして、日本のインドアゴルフ練習場の中にもシミュレーションゴルフのマシンが置いてあるところがあります。練習場といっても、シミュレーションゴルフがあればそこは遊べる場所にもなります。GDRという、シミュレーションゴルフのシステムをトレーニング用に特化させたマシンもあり、20代の男性などはこうしたインドアゴルフ練習場に足を運んでいます。従来のゴルフとは、遊び方も、練習法も違う感覚がうけています。

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シミュレーションゴルフ場という可能性

もう一度、話を日本に戻しましょう。日本のインドアゴルフ施設の新しい業態の一つに、ゴルフ練習場とは別の、シミュレーションゴルフ専門店があります。

韓国のゴルフバンと似ている点もありますが、違うところもあります。ゴルフバンはドア付きの部屋にマシンが設置されているカラオケボックスのような作りがほとんどですが、日本の多くのシミュレーションゴルフ専門店には、オープンスペースに鳥カゴのようなブースが作られ、そこにマシンが設置してあります。
韓国ではオンライン対戦も人気があって大規模な大会が開かれるほどですが、日本ではそれほどでもなく、少なくとも今は仲間同士で来店してアルコール類を飲みながらゲームを楽しむスタイルが多いようです。

共通点は、韓国のゴルフバンも日本のシミュレーションゴルフ専門店も、男性客の比率が高く、オフィス街に近い立地の店舗では会社帰りのサラリーマンが通う姿が見られることです。少しずつですが、日本でもシミュレーションゴルフは身近で手軽で面白い遊びとして、定着しつつあります。シミュレーションゴルフでゴルフにハマったという人も現れているので、やがて日本でも、マシンでゴルフを始めた後、コースに出てフィールドゴルフもやってみるという層が作られていくかもしれません。今までのゴルフとは別の形でゴルフを始める人の数は、少しずつですが確実に増えています。

実のところ、シミュレーションゴルフがゴルフ市場を再び活性化させる可能性は十分にあるでしょう。韓国で実際にそれは起こり、欧米でもそれと似た状況が生まれているのです。シミュレーションゴルフは、インターネットでプレーヤー同士を結びつけ、アプリを使って過去のスコアや戦績を確認できるなどスマートフォンとも親和性が高いコンテンツでもあります。シミュレーションゴルフ施設が増えていけばネットと端末を介して評判が広がり、あるところから爆発的にプレーヤーが増えていくことも期待できます。

シミュレーションゴルフの拡大がゴルフ人口の減少を食い止め、新しい市場を作り出すというのはけっして大げさな話ではありません。ゴルフが新しい業態、新しいテクノロジー、新しいターゲットと結びついたとき、新しいゴルフのムーブメントが生まれるはずです。シミュレーションゴルフ専門店に実際に足を運んでその目で確かめてみれば、シミュレーションゴルフの持つ大きな可能性が、すでに市場を切り拓きつつあることを実感できるでしょう。