アノ人に聞くシミュレーションゴルフ

2016.04.19

ティーチングプロ・ヨッシー小山さん(前編)「米LPGAは【ゴルファー】の前に【アスリート】を育てる」

アメリカLPGAのA級ライセンスティーチングプロであるヨッシー小山さん。2000年にご主人に帯同してアメリカに移住し、「なんとなく出てしまったコンペ」をきっかけに、なんと35歳からゴルフを習い始めて、さらにはティーチングプロをめざすことになったという経歴の持ち主です。

2007年にはシングルハンデになり、USLPGAティーチングプロ実技試験に合格。翌年に筆記試験に合格すると正式にティーチングプロになったとのこと。現在は日本で、主にジュニアやレディースを対象にレッスンを行う傍ら、セミナーやイベントにも出演。

今回はそんなヨッシー小山さんに、ゴルフの練習のこと、アメリカと日本のレッスンの違い、インドアレッスンのメリットについてなど、いろいろと気になるお話をうかがってきました。なお、インタビューは、日比谷の東宝ツインタワービルB1にある「ドライビングレンジ日比谷」におじゃまして行いました。

1

ゴルフと他のスポーツのコラボ


―― ヨッシーさんの最近の活動を教えてもらえますか?

ヨッシー小山 今は、インドア、アウトドアを含めた通常レッスン、それから契約しているプロの選手がいますのでそのメンタルコーチ、今年(2015年)は世界ジュニアに出る子供たちの帯同などもさせてもらっています。


―― セミナーの講師やイベントでもご活躍ですが、最近はどんなイベントが多いのでしょう?

ヨッシー小山 一昨日は東宝調布スポーツパークの5周年イベントでいくつか企画があって、そこで私もレッスンをさせていただきました。それと佐竹美帆ちゃんっていう元NFLのチアリーダーの子にゴルフダンスというのを作ってもらって……。


―― ゴルフダンスですか?

ヨッシー小山 そう、ウォーミングアップでやったりするんですよ。最近、他のスポーツとのコラボをいろいろとやっています。ダンスとかラグビーとか。ゴルフっていろんなスポーツと組み合わせると面白いんですよ。それに、ゴルフって片方の捻転運動なので、ゴルフだけをやっていると故障が多くなるんです。


参考:
DanceSwing Golf
  ※別サイトに飛びます。


―― ああ、ゴルフは右半身も左半身も同じように使うというスポーツではないから?

ヨッシー小山 そうですそうです。だからいろいろなスポーツをやった方がいいというのが私の持論です。もともと日本って、小さい頃にゴルフを始めたらゴルフしかしないっていうのがありますよね。中高生の部活でも、始めたらその部活しかやらないとか。

3

アメリカでは、たくさんのスポーツをまずは体験する

―― 同じスポーツに打ち込む人が多い。

ヨッシー小山 ええ。でもアメリカだとちょっと違います。小さい子には最初にいろんなことをやらせるのが基本です。10とか20とか、スポーツに限らずいろんな種類のことを体験させて、ある年齢になったらその中から本人がいくつかに絞っていく。高校生になっても2つくらいやっています。そうやって自分の道を決めていくんですよ。


―― 好きなものや向いているものを選んでいくわけですね。

ヨッシー小山 世界ジュニアに出ているようなレベルの子でも、本当はアメフトの方が好きとか、テニスの方が得意とか、二足のわらじで出ていることがあります。そのあとに、大学に進んでゴルフ部に入って……それも日本みたいに“一芸”で入るのじゃなくて、学力がないと入れない世界なのでちゃんと入って、メジャーなことを勉強する。で、ゴルフに行くか、ビジネスの世界に入るかっていうのをすごく考えて、プロゴルファーになっていくっていう。いつもいつもゴルフだけじゃなくて、いろいろなものの中で選択しているわけです。

参考:
– “夏はプロ野球選手、冬はアメフト選手”を生み出す、アメリカの体育事情【vol.5】
– 運動部学生に文武両道の全人格教育を!アメリカの学生スポーツ界を土台で支える”もう一つのTPP”とは
※それぞれ別サイトに飛びます。


―― 日本とちょっと事情が違う。

ヨッシー小山 違いますね。日本だったら、プロゴルファーになりますということになったら、どうかすると高校も行きませんくらいになっちゃうので。


―― 野球やサッカーなどの他のプロスポーツもそうですよね。

ヨッシー小山 ですよね。それで、じゃあプロゴルファーになりました、ある年齢で引退しました、そのあとのセカンドライフを考えた時にすごい大変なことになっている方、多いじゃないですか。だからそれを私の方で少しでも回避させられる方法はないかと考えているんです。それで例えば小さい子や若い人たちに、他のスポーツとのコラボをしながら、ゴルフだけじゃないものをたくさん体験してもらう、それでまずはアスリートとして体を作ってもらう、あとは人としてももちろん成長してほしいので、それは別の取り組みとして行っているつもりなんです。ゴルフの技術だけが上がって、ゴルフさえ上手ければ食べていけるっていう世界はこれからもうなくなると思うんですよ。


―― それでゴルフという枠を超えた活動を。

ヨッシー小山 ええ。なので最近は、いろんなところにちょこちょこと行ってます。トランポリンをやってみたりとか、あと最近面白いと思ってるのはバブルサッカー。


―― ああ、風船みたいな大きなバブルボールを身体につけてやるサッカー。

ヨッシー小山 あはは、あれ、すごい面白そうでしょ!そういうのをたくさん子供たちと経験しながら、身体を作って行けたらいいなって思ってるんです。

2

いろんな運動をしていた方が、ゴルフの伸びは早い


―― ゴルフだけじゃなくていろんなスポーツをやると、ゴルフにも良い影響があるんでしょうか?

ヨッシー小山 あると思います。ゴルフだけだと、まず筋肉の付き方やバランスが偏ってくるので故障が多くなるんですよ。


―― 使う筋肉が限られてくる。

ヨッシー小山 ええ、それにまだ小さくて身体が柔らかい時に無理をさせたスイングっていうのが小さい時はできるんですけど、大人になるにつれて身体は硬くなっていくわけで、それができなくなる。その時に故障を起こして、小さい時に例えば世界一とかになった子が、17、18、19歳で消えていくっていうのが一番怖いわけです。一番ピークを迎えてほしい20歳くらいの時に体の故障でダメになって、じゃあ他のスポーツに移れるかというと、なかなかそれもできなかったりとか。


―― ということはゴルフだけではなく、まずスポーツ全般ができる身体やマインドを作るということですか。

ヨッシー小山 そうです。アメリカでは、今はまずはアスリートを作るという考えが主流になっています。そこからゴルフにアジャストさせていく方が体も壊れないし、短期間でものすごい成長を見せてくれる。19、20歳にピークを迎えるというのが理想です。私のやり方でも、それより若いうちはあまりゴルフばかりじゃなくて、むしろゴルフは体験するレベルで、他のスポーツに分散させている感じです。


―― それはアマチュアでも同じですか?

ヨッシー小山 はい。いろんな運動をしていた方が、ゴルフの伸びは早いと思います。絶対、早い。


―― 野球とかテニスとか。

ヨッシー小山 野球もテニスも関係あります。いろんなスポーツをしていた方が、教えるこちら側からしても伝えやすいんです。例えばテニスをやっていたとしたら、テニスをやっている方の感覚で教えていけるんですよ。体重移動についても「サーブする時は後ろに移動させてから、前に移動させますよね」と伝えられたりとか。手の返し方もそうです。テニスでスピード出す時に手を返すじゃないですか、あれってリリースに当たるんですよね。すぐそこのアプローチをする時も、どういう風にクラブを持って行くかっていうのをボレーの感覚で教えられる。ボレーって、面を合わせてそこに持って行くから、あの感覚でアプローチもパターも教えられるんです。野球でもサッカーでも、すべてのスポーツに関連して比喩表現を使えるので。

5

日本とアメリカのLPGAでは教え方が違う?


―― そういうことも含めて、プロの世界でも、例えば日本とアメリカのLPGAでは教え方が違うんでしょうか?

ヨッシー小山 ええ、私は日本のやり方は詳しくはないんですが、違うみたいです。先週、講習会を開かせてもらった時も、日本のLPGAに所属している方がいらっしゃったんですけど、日本では他のスポーツの理論をゴルフに採り入れるといったことは習わなかったっておっしゃっていました。


―― 他にはどんな違いがあるのでしょう?

ヨッシー小山 今、私が講習会でやっているのは、右脳派なのか、左脳派なのかをまず見ていこうというやり方です。これも一つの考え方ですが、右脳か左脳かで、教える時のアプローチが変わるんですよ。左脳派の方は細かいことを気にするし、ステップ・バイ・ステップで進んでいく傾向が強い。一方、右脳派の方は全体像をイメージで把握するのが得意で、螺旋状に教えてもOKなんです。なので、左脳派の方に対してざっくりとした教え方をするとアウトで、一つやったら次、また次という風に説明すると伸びていく。


―― 右脳派か左脳派かはどうやって見分けるんですか。

ヨッシー小山 私はレッスン前、最初にインタビューをして確かめます。さらにそのあと、目からの情報を重視する人なのか、耳なのか、体感なのかもチェックします。これもまたアプローチが変わります。目で捉えて理解する人にいくら言葉で言っても効果が薄いんです。「こうです」って見せた方が早い。次にスポーツ歴を聞いて、先ほど話したようなスポーツ歴に合わせたやり方を考えて実行します。「野球の時はこうしますよね、スイングも同じですよ」って。「ちょっとアンダースローで投げてみてください、その体の動きがアプローチに近いんですよ」とか。そうやって相手の方に合わせたアプローチをしていけば、短いレッスンの時間を有効に使うことができます。


韓国にはUSALPGAの有資格者が100人!?


―― 一人ひとりに最適なアプローチ法があると。誰に対しても同じ教え方だと、確かに合う合わないがありそうですね。

ヨッシー小山 そうです。講習会でも話すんですが、その相手の方の特徴を把握するためのリストがあるんですよ。普段の生活の傾向とか、仕事の傾向、ゴルフの傾向を聞き出すためのリストです。それをみなさんに資料でお渡しすると「すごーい!」って喜んでもらえます(笑)。そうやってその人に合わせて教えるのがアメリカのLPGAのやり方なんです。それを今、アメリカからレッスンプロを呼んできて、日本でも広めようとしています。公式のセミナーを来年(2016年)やるので、これから日本でもUSALPGAのレッスンプロが増えると思います。


―― 日本には今、ヨッシーさんを含めてUSALPGAの有資格者が3人しかいないとか。韓国にはたくさんいるそうですね。

ヨッシー小山 そうなんですよ。私がアメリカで資格をとっている時に、同じように挑戦している韓国の人が1人いて、「がんばろうね」って言ってたんですけど、それが今、韓国にはUSALPGAの有資格者が100人いるそうです。これはちょっとマズいって思ってて。よく日本と韓国の違いは何だとか、なぜ韓国の女子プロは強いのかっていわれますけど、ティーチングの世界だけでいってもこれだけ差があるんですよね。

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後編へ続きます。

ティーチングプロ・ヨッシー小山さん(後編)
「ゴルフシミュレーターはメジャーメント感覚を養うことに最適」